これからの技術者育成と高専(東京工業高等専門学校長,独立行政法人国立高等専門学校機構理事 古屋一仁)
これからの日本のものづくりを支える技術者、その育成そして高専がすべきと考えていることを述べる。
ドラッカーは「生産性を向上させるものは知識である」を公理に据え、「今日求められているものは、知識の裏づけのもとに技能を習得しつづける者であるとし、技能の基盤として理論を使える者は無数に必要」と言った。そして「若者のなかでも最も有能な者、最も知的な資質に恵まれた者、最も聡明な者にこそ、知識に裏づけられた技能を使う能力をもってほしい」と呼びかけました(『断絶の時代』1969)。
フリードマンは「これまでやってきたものづくりの内、新興国に移すべきものは移し、国内では新たな、より高度なものづくりを創り出すことで我が国の産業を再興・発展させていく必要がある。未だ見えていない高度なものづくりの創造に際限はない」と言います(『フラット化する世界』2006)。
ジム・プラマー(スタンフォード大工学部長)は「起業したり、会社で新しい方向を考えたりできるように若い人を育てるのが大学の使命。伝統的な工学教育に替えて、私たちの生活にかかわる課題そのものを見つけるところから始めてビジネスにつなげる。単なる講義ではなく、グループでプロジェクトに取組み、コンペに参加したりする。そうした経験を積むことで、だれもが創造的になり得る。20世紀と違うエンジニアが求められています。環境や医療など、人々の関心の高い課題に創造的に挑むやり方を教える」と述べた(2013年8月朝日新聞記事)。
今こそ技術者教育に力を入れるときです。学問のしっかりした基礎の上に、新たな技術や社会を創り出すイノベーティブな技術者に育てる必要があります。教育熱心な教員を擁する高専はこの教育に適する。ユーザーと価値共創したり、学生が主体的に学び、その面白さを体験し、生涯学び続ける力を獲得するような“仕掛け”、様々なコンテストがその代表、をこれまでに築き上げてきた。またそれをさらにパワーアップする“仕掛け”を現在構築中です。
高専で構築している“仕掛け”をより有効なものにするために、本日は活発なご議論をお願いいたします。